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悟りへの梯(はしご)! 身延山随一の難所、菩提梯に挑む

身延山久遠寺の菩提梯

身延山の中で最も「しんどい」場所。それが菩提梯(ぼだいてい)だと言って、過言ではないと思います。

 誰しもが菩提梯を前にすると「わあ~!すごい!!」と、驚きの声をあげます。引き返す人、果敢にチャレンジする人、脇道である男坂、女坂から上っていく人に分かれますが、前回特集した三門からの仏教的意味の流れとして、三門でお釈迦様、十六羅漢によって菩提に誘われ、菩提梯を上って悟りを得、久遠寺境内という浄土へ達するという流れには欠かせない存在です。

 菩提梯は段差が大きく、非常に急な階段で、その段数は287段に及びます。「南無妙法蓮華経」のお題目、7文字を41遍唱えるとちょうど割り切れるため、 一段一段お題目を唱えながら上ると良いとされます。

 菩提梯には踊り場がいくつか設けられていますが、踊り場ごとに自分が上ってきた階段を見下ろすか、ひたすら無心で登り、境内まで到達してから下を振り返るか、上り方に人生が表れる気がします。

 私は後ろを振り返りながら鑿の跡が残る階段を、造立に携わった方々の苦労に想いを馳せ、15分ほどかけてゆっくりと登ります。一つ目の踊り場に達する前に心臓は鼓動を早くし始めますが、途中で合流する男坂に流されたくなる気持ちを抑えつつ、上りきった際に正面に見える久遠寺本堂の美しさにはいつも感動します。菩提梯を上がって無心になるというより、しんどさに誰しもが無心になる、という方が近いでしょう。

菩提梯にまつわる親孝行のエピソード

 菩提梯が造立される以前は、三門から久遠寺までの間は急な斜面を登る坂しかなったそうで、それにまつわる親孝行のエピソードが残されています。

 昔、佐渡の仁蔵(にぞう)という漁師が老いた母親を連れて念願の身延山詣でに来た際、あまりに急な坂だったため、母親を背負って上ったところ、母親が「ここに階段があったなら、さぞ良いだろうに」と呟きました。そこで仁蔵が発願して菩提梯を造ったというもので、それに伴う伝承もいくつか残されています。

 ただ、歴史的な事実としてわかっていることは、佐渡の仁蔵が1632年頃に菩提梯の造立を発願し、「石一つ運んだ者には銭○貫文を与える」という立て札を立て、施主と労働力を募って多くの人々に菩提梯造立に寄与させ、およそ4ヶ月をかけて完成にこぎ着けたというものです(80年とする説もありますが、おおよその完成は4ヶ月であり、補修や追加工事などを含め、最終的に現在の形になったのが着工から80年後ということだと思います)。

■採石場跡
身延山の採石場跡

 仁蔵は功徳勲功を自分のものだけにはせず、自らの蓄えた財産をもとに、多くの人に働きかけ他の人にも徳を積ませたのです。

 また、親孝行のエピソードの言い伝えでは仁蔵が佐渡金山の発見者であることになっていますが、それは佐渡金山側の史実と異なっています。残された資料によれば、仁蔵は佐渡金山の工事において大きな手柄をたて、徳川家康から「味方」の姓と「家」の字を授かった味方但馬家重のゆかりの何某かの人物なのではないかと、察することが出来るそうです。

 資料には仁蔵が菩提梯造立を発願したきっかけは書いていませんが、言い伝えのように、母親がつぶやいたひとことをきっかけとした親孝行だったのかもしれず、本当のところはわかりません。いずれにしても、仁蔵の功績は大きいものだったのは間違いないでしょう。

 現在も身延町内には菩提梯の石を切り出した場所が残っており、菩提梯造立に関わった全ての方々のご苦労が忍ばれます。

菩提梯は気を付けてお登りください

 仏教的意義や歴史背景などを考えると是非上っていただきたい階段ではありますが、年に何度かはAEDの出番がある心臓破りの階段です。私も実際に上り切ったものの、具合が悪くなって横たわる方を何度か目にしています。体調の悪い方は無理せずに、男坂か女坂から上りましょう。

■男坂入り口
身延山久遠寺の男坂入り口

■女坂入り口
身延山久遠寺の女坂入り口

 菩提梯に向かって右側、南部実長公の銅像がある脇から続くのが男坂、その手前に赤い橋がかかっているのは女坂です。男坂は菩提梯と交わりながら急坂を蛇行して本堂正面に出ますが、女坂は久遠寺境内の端、甘露門の下に出ます。

 傾斜は女坂の方がゆるやかですが、距離が少し長くなります。坂道は男坂女坂とも舗装されていませんので、足下が滑りやすいことがあります。車移動も含め、ご自分の体力に見合ったルートを選択して下さい。

 女坂の途中には、円台坊さんや学業にも御利益のあるという文殊稲荷さん、湧き水等がある他、男坂より木立の隙間から所々景色も楽しめます。さらに桜の時期にはご褒美のようにゴール付近に枝垂れ桜が待っていますので、散策気分でゆっくり上られてもよろしいでしょう。

■菩提梯の最初の一段
菩提梯の最初の一段

 ちなみにこの菩提梯。287段と昔からいわれていますが、実際に数えると286段しかないとか? はっきりしたことはわかりませんが、地震の影響や菩提梯に続く石畳の工事の際に最初の一段が埋まってしまったのでは、と推測されるそうです。確かによく見ると一番下に数センチほど、階段が顔を出しているのがわかります。上りながら、是非段数も数えてみてください!


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身延山久遠寺の菩提梯

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ライター紹介 ライター一覧

ゆる身延

ゆる身延

Facebookページ「ゆる身延」主宰。横浜出身、身延町在住。身内の供養の為に2000年頃より久遠寺に通い始め、不思議な仏縁を得て身延の僧侶と結婚。趣味で行なっていた史跡探訪等の知識を活かし、身延山の情報発信やコラムの執筆などを行なっている。

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