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鎌倉から身延山まで、日蓮聖人の歩みを巡る旅

 皆さまこんにちは。身延在住のゆる身延です。今回は身延山久遠寺の開祖、日蓮聖人が身延山に入られるまでの道のりと、現代にその歴史が残る各地のお寺をご紹介します。

 日蓮聖人は波瀾の鎌倉時代において世の人々の安寧を願い、鎌倉幕府に三度の諫言をしましたが、いずれも受け入れられず、厳しい法難に遭われてきました。

 佐渡への島流しから鎌倉へ戻られた日蓮聖人は程なく「三度諫むるに用いずは、山林に交われ」という故事に従い鎌倉を後にされ、日蓮聖人の篤信者であった南部実長(なんぶさねなが)公の招きにより、身延に向かって旅立たれたのです。

 鎌倉の出発点は本覚寺の戎(えびす)堂でした。そこから小田原の法船寺、静岡県内では竹ノ下常唱院、車返、本光寺(もしくは大泉寺)、山梨県に入り、南部の妙浄寺に宿泊され、身延山に入られたといわれています。

 スケジュールの都合上、起点は日蓮聖人が最初に宿泊された小田原になりましたが、実際に私も車でこの道のりを辿ってみました。といっても、日蓮聖人の時代は峠や宿場を経ながらの道のりですので、ポイントの場所を辿ったに過ぎませんが、車で神奈川方面から身延山へ向かって来られる方なら一日でなんとか周りきれると思います。

日蓮聖人が宿泊された霊跡の伝承

法船寺(神奈川県小田原市)

法船寺(神奈川県小田原市)

 日蓮聖人が鎌倉を出立し、最初に泊まられることになったのが小田原です。

 日蓮聖人一行が宿が見つからずに困っていたところ、とある松の木の近くにある建物から老人が出てきて手招きしました。その建物は地蔵堂であり、飯山入道という堂守は一行を泊め、翌日には自ら船で日蓮聖人を川向こうまで送り届けたそうです。

 日蓮聖人はこれに感謝して、飯山入道に済度法船居士という法名を授けました。そして後に日朗上人の弟子、朗慶上人を開山に招き、この地に一寺を建立、済度山法船寺としたということです。

 境内には日蓮聖人が宿泊された地蔵堂にあったというお手引き地蔵(日蓮聖人開眼と伝わる)を祀ったお堂や、本堂向かって左手に進むと小ぶりながら総桧造り瓦葺きの五重塔があります。

 寺務所ではお守りや妙符も購入することが出来ます。

常唱院(静岡県小山町)

常唱院(静岡県小山町)

 法船寺から車で1時間ほどで、竹之下常唱院に着きます。電車だと足柄駅から徒歩で無理なく行けるほど近い場所にあります。

 日蓮聖人が身延山御入山の折と湯治のために常陸の湯へ向かわれる途中、そして、御遺骨となって・・・という三度の道のりの一泊を過ごされたのがこの竹之下宿です。

 日蓮聖人が身延山への道すがら竹之下宿に到着した折、鈴木繁ハという人の供養を受け、一泊のお礼に曼荼羅本尊を書き、村人に授与しました。その後、村人が御堂を作り、講をもうけ、1831年に常唱院としたそうです。

 しかし、竹之下宿は度重なる火災に遭っており、現在の本堂は昭和32年頃建てられたものとのこと。数軒の屋号を残す家屋を残す他は、宿場町の面影はないように見えます。

 現在は法華宗本門流の寺院となっていて、普段は無住です(沼津・光長寺管理)。

車返霊場(静岡県裾野市)

車返霊場(静岡県裾野市)

 竹之下から20キロほど離れた場所にあるのが車返結社です。

 車返結社のお堂は、御殿場線岩波駅が最寄りです。御殿場線の踏切がすぐそばにあり、団地を背にした雑然とした場所にあります。

 お堂は大きくはなく、いくつかの石碑と、石像が安置された祠(はっきりはわからないのですが、七面さまだといわれています)がある以外は、竹之下同様こちらも無住で人気はありません。

 日蓮聖人は身延山入山の折と、御遺骨になられて・・・の二度この車返しに宿泊されたとされていますが、かつては車返しはもう少し沼津寄りだったという説があります。

 堂内には神仏分離令が出された折、富士山頂から下されたという唐銅の祖師像が奉安されています。

本光寺(静岡県富士宮市)

本光寺(静岡県富士宮市)

 鎌倉を出てから4日目、5月15日に日蓮聖人が立ち寄られたのが「おおみや」です。

 富士宮市は「大宮町」と「富丘村」が合併してできた市で、今で言うと日蓮聖人は富士宮に泊まられたことになりますが、当時は「おおみや」でした。

 富士宮で日蓮聖人が泊まったという伝承があるのは二ヶ寺ありますが、本光寺さんはそのうちのひとつで「黒田の本光寺」として知られています。

 日蓮聖人が身延山に向かわれる途中、夕暮れになろうとしているのに宿が決まらず公孫樹(いちょう)の下で休息されていたところ、里人の遠藤左衛門夫妻が歩み寄り、柏餅とお酒、お布施として鵞目(がもく。穴が開いている硬貨のこと)を差し上げました。

 話を交わす内に左衛門の妻の乳の出が悪く困っているのを知った日蓮聖人が、妙符を授けてご祈祷をすると、途端に乳の出が良くなったといいます。これに大変感謝した夫妻は、日蓮聖人を家に招き、もてなしました。

 後に、この時の子供が成長して日蓮聖人の弟子となり日静の法名を授かって、日蓮聖人と両親が出会った公孫樹のそばに鵞目山本光寺を建立したと伝えられています。

大泉寺(静岡県富士宮市)

大泉寺(静岡県富士宮市)

 富士宮で日蓮聖人が宿泊されたと伝わるもう一つのお寺が大泉寺さんです。

 大宮に到着された日蓮聖人御一行は、由比五郎邸にて一泊されたといいます。由比五郎は日蓮聖人の直弟である六老僧日興上人の叔父に当たる人物であり、日蓮聖人を手厚くもてなしたそうです。

 由比五郎は日蓮聖人の弟子となり、一寺を建立することを決意。日興上人を開山、自らを二世として、万野原に大泉寺を興しました。その後火災に遭い、1605年に現在の地に移った後、数々の伽藍を有し、四ケ坊の塔頭を有し、末寺五ヶ寺を持つ大寺院となりました。

 昭和に入り、基本的には本末制度は解体されましたが、今も大変立派なお寺です。

 大泉寺さんに奉安されている祖師像は、元は富士山の経ヶ岳に祀られていた祖師像で、幕末の黒船襲来の折りに富士山から京都御所まで遷座し、孝明天皇が国の平穏を祈願されたため「天拝の祖師像」といわれています。

 寺務所ではお守りなどを購入することが出来ます。玄関脇には看板猫さんもおりました。

妙浄寺(山梨県南部町)

妙浄寺(山梨県南部町)

 おおみやを出られた日蓮聖人が、身延山を前に最後に御一泊されたのが南部の妙浄寺です。妙浄寺さんは、甲斐源氏の祖、新羅三郎義光(しんらさぶろうよしみつ=源義光)開創の由緒あるお寺で、甲斐源氏の祈願寺でもあり、南部家の菩提寺でもありました。

 元は妙楽寺という真言宗寺院でしたが、文永11年5月16日、日蓮聖人が身延を目指す道中にこのお寺に一泊し、時の住持である大輪法印は日蓮聖人と法論。結果、日蓮聖人に帰依して改宗しました。このため、妙浄寺は日蓮聖人の甲州での最初の弘教霊場として知られています。

 境内より一段下の寺域内には「花釣瓶の井」という井戸があります。伝承によると、日蓮聖人がこの井戸で口をすすいでいたところ、花枝を持った病の妊婦に助けを求められ、妊婦が手にしていた花を井戸の釣瓶に挿し加持をした所、全快したため、井戸は「花釣瓶の井戸」と呼ばれるようになったという事です。

 本堂の裏手には八幡屋敷といわれる場所があり、かつて八幡神社がありました。南部家二代目実光公によって承久2年奥州三戸に御神体を移し、現在は八戸市の櫛引八幡社になっているといわれています。

日蓮聖人の足跡を訪ねて

 以上が鎌倉を発たれた日蓮聖人が宿泊された場所といわれていますが、歴史と共にお寺も場所を移ることもあり、必ずしも「この場所」ということは特定できません。しかし「この付近の場所」であったことは確かであり、足を運ぶ価値はあります。

 また、山梨に入り、南部妙浄寺さんの前に万沢顕本寺、後に桜清水実教寺、粟飯霊場正慶寺などにも立ち寄られていたといわれています。そして身延山に入られた後、日蓮聖人は現在の御廟所域に御草庵を設けてお住まいになられました。

身延山御草庵跡

 お時間のある方はこうした場所にもお参りや、御朱印をいただきに立ち寄られると良いかと思います。



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法船寺(神奈川県小田原市)

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ライター紹介 ライター一覧

ゆる身延

ゆる身延

Facebookページ「ゆる身延」主宰。横浜出身、身延町在住。身内の供養の為に2000年頃より久遠寺に通い始め、不思議な仏縁を得て身延の僧侶と結婚。趣味で行なっていた史跡探訪等の知識を活かし、身延山の情報発信やコラムの執筆などを行なっている。

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