誰にも会わずに一人でできる、心に寄り添う身延山本行坊の水子供養
皆様こんにちは。身延在住のゆる身延です。今回は私自身にとっても救いとなった、水子供養の話を紹介させて頂きます。
まず水子供養は、とても敷居の高いものに感じてしまうのではないでしょうか。どのようにしたら良いのかわからない、お寺さんに相談しにくい、お金がたくさんかかるかもと不安になり、供養出来ずにいる方、供養してもらえずにいる水子さんが世の中にはたくさんいると思います。
しかしそのような心配が一切不要な水子供養が、身延山にはあります。お賽銭箱に500円を入れて水子観音さん(もしくは近くのお堂)の脇に置いてある小さな水子地蔵さんを受けるだけ。その水子地蔵さんはお家に持ち帰っても良いですし、そのまま置いて帰ればご住職が供養して下さいます。誰にも知られず、大きな負担をかけず、自分だけで行える水子供養です。
試行錯誤しながら生まれた新しい形
この水子供養は身延山の塔頭寺院である本行坊さんが始められました。
■本行坊
ご自身の経験や僧侶としてのご縁で受けた相談などから、命がこの世に五体満足で当たり前に生まれてくることについて考えさせられたと語るご住職が、小さな命を失った人にもっと寄り添えないかと工夫を重ね、この形に行き着きました。
ご住職の試みは、最初は小さな卒塔婆を申し込んでもらう所から始まりました。しかし未婚のカップルが名前を記す際にパートナーと名字が違うために躊躇っていた様子を感じ、なんとか本人達だけで出来る供養はないかと考えられたそうです。それから何度かの試行錯誤を経て、現在の形に行きつきました。
「供養の為にお経を上げなきゃなんて、それはお坊さんの押し付けであり、当人の気持ちが大事。水子さんのお母さんが自分で供養してあげられればいい」
そう仰るご住職からは、水子さんを持った女性への配慮が滲み出ていました。
本行坊さんの水子供養に助けられた私自身
私自身も本行坊さんの水子供養の形に救われた一人です。私には生まれる前に(中には鼓動を始める前に)、お腹の中で成長が止まってしまった子が3人います。あまりに早いお別れだったため、流産手術をした後に、私の手元には命であった子供達の何も残りませんでした。
水子供養のお経を上げてもらっても、その子たちの命が体内で失われてしまった空虚感は変わりません。それどころか月日が経つごとに、いつか主人にも子供にも、この子達のことを忘れられてしまうのではという気持ちが大きくなりました。何か手元に残してあげたいけれど、どうしたら良いかわからない。そのような時に、この水子地蔵さんと出会いました。
■水子地蔵さん
最初は2体分、1000円をお賽銭箱に入れてお地蔵さんを持ち帰り、家の仏壇に置きました。にこにこと可愛らしい顔のその姿は、生まれ出でることが出来なかった我が子が微笑んでくれているようで、やっとこの子たちを形にしてあげることが出来たと、なんだかとてもホッとしました。さらに水子さんが増えてしまった時も、また受けに行きました。
もっと多くの方に知ってもらいたいという思い
本行坊さんの水子地蔵さんに出会ってから、私と同じように水子さんの供養のことで、気持ちが晴れずにいる方も多いのではないかと思い始めました。そして本行坊さんの水子供養を、もっとたくさんの方に知ってもらいたいと思いました。
■本行坊さんからの眺め
水子供養を受けられているお寺さんは、日本各地にあります。丁寧なお寺さんだとどのような流れで水子供養が行われるかが書かれた上、お布施の額も明示されています。ただ各お寺さんで様々な取り組みをされているとは思いますが、水子供養に関しては「対面」したくない場合もあります。
特に未婚の方はあえて地元のお寺さんを避け、ホームページを見て遠方のお寺さんへの供養依頼も少なくないそうです。
お腹の中の子とお別れをしなければならないということ
水子さんを持つ理由は人それぞれ・・・。赤ちゃんを望んでいたのに流産してしまう場合もあれば、様々な理由から中絶しなければらなない事もあります。その中には産みたいのに産めない、望まぬ妊娠、犯罪被害・・・それぞれ苦しい事情があるでしょう。それだけに本当は誰にも関わらずに、大ごとにせずに(自分の気持ちの問題として)、静かに供養したいと思っている人も多いはずです。
女性であれば誰もが、流産や中絶に際して何も感じないはずはありません。妊娠した段階から感じる体調の変化(多くは体調不良)、妊娠が中断となるまでの葛藤、手術台に上がるまでの恐怖(自然流産した戸惑い)、術後の虚無感、痛み、急激なホルモン変化によるさらなる体調不良などにも直面します。
ただ、「流産、中絶する」それだけではないのです。心と体が、全て、妊娠を中断されることにより振り回されます。
産婦人科では心のケアはしてくれません。もやもやとした気持ちを抱え、心身のバランスを崩してしまったら、精神科で薬をもらうしかないのです。そうなる前に、せめて供養という形でお寺さんが関われないかと思います。
お寺に出来るこれからのこと
水子供養に際しては、失われた命について考え供養しなければならないというご意見もあるでしょうが、ただでさえ心身ともに傷ついている女性たちに命の大切さを諭すのではなく、まずは寄り添い、救ってあげて欲しいと思います。
水子供養は気負わずに出来るものであり、少しでも本人に供養したい気持ちがあれば、供養することで楽になることもあると伝えて欲しいです。
誰にも知られず供養したい。お寺に水子供養をしてもらわずに、自分達だけで供養したい。過去に流産、中絶したままになっている水子さんをささやかながら供養したい。様々な形に沿う水子供養が、これから大切になってくるのではないでしょうか。
そのためにも「何を行うのか(行えばいいのか)わからない」「問い合わせをする事への躊躇い」を払拭していくための努力がお寺さんにも必要なのだと思います。
不妊治療が保険適応となり、さらに高齢出産やリスクも多くなるであろう今、必然的に水子供養の重要性も増していきます。どうかもっと水子供養をしやすい、またはお願いしやすい環境を作ってください。ホームページやSNSなどによる発信も大切な一歩です。
本行坊さんの水子地蔵さんは365日24時間、ご自分で受けられます
本行坊さんは久遠寺のメイン駐車場、せいしん駐車場すぐ近くにあります。そしてその境内下にある水子観音さんで、水子地蔵さんは自由に受けることが出来ます。
■水子観音
またこの場所だと人目が気になるという方は、駐車場入り口から久遠寺境内への坂を登っていく途中にある琥珀堂でも受けることが出来ます。私も琥珀堂でお受けしてきました。
■琥珀堂
後は水子地蔵さんを持ち帰って自分で供養をするのも良し、水子観音さんにお願いして、その足元に置いて帰るも良し。気が向いた時に自分で行って、自分で決めることが出来ます。
「水子さんのお母さんの気持ちが救われるのがいちばん」
そうご住職が仰って下さっています。もし水子さんのことで心に靄がかかっている方がいれば、是非訪れてみてください。可愛いお地蔵さんの姿に心も癒されます。
水子地蔵さんをお受けする際、お寺の門を叩いてみようという方は、本行坊さんにもお参りしてみてください。御不在の場合もあるため、もし対面しての水子供養をお願いしたいという方は、事前に連絡をされることをお勧めします(お電話での問い合わせ、ご住職にお会いしての供養依頼は常識の範囲内のお時間をお願い致します)。電話番号:0556−62−0019
皆さまの心を受け止められる形が、いつも身延山にあることを願っています。