おてらおやつクラブ物語(井出留美)
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仏様におそなえされた食べ物やお菓子などを、十分に食べることができない家庭におすそわけしている『おてらおやつクラブ』。ほーりーがこの活動を最初に知ったのは、2015年に京都・西本願寺で講演させて頂いた時でした。
講演者は私の他にも複数人いて、そのうちの一人がこの『おてらおやつクラブ』を立ち上げた代表の松島靖朗さん(奈良・安養寺住職)です。お寺は檀家さんから頂いた食べ物を消費しきれずにいます。一方で日本には経済的に苦しんでいる方がたくさんいます。そこでこの二つをつなげば、多くの方の助けになると考えられたのがこの活動の始まりです。
私が話を聞いた当時は賛同寺院が200カ寺くらいだったものが、10年経った現在では2200カ寺以上に広がっています。またグッドデザイン大賞を受賞したり、非常に高い公益性が国から認められなければなれない認定NPO法人に選ばれるなど、社会的にも大きな存在になりました。
そしてこの本は食品ロス問題における第一人者の井出留美さんが、『おてらおやつクラブ』を取材して書かれた本です。その内容は前半が日本で貧困家庭が置かれている状況とたくさんの食料が廃棄されている現状、そして中盤からは松島さんが『おてらおやつクラブ』を立ち上げた経緯とそれからの試行錯誤、さらに最後はこの活動によって多くの方が救われている現場の声によって結ばれています。
お坊さんの様々な活動を取材していていつも思うことですが、私自身は人間のネガティブな感情にふれることが苦手です。だから宿坊とか婚活とか、できるだけ楽しい方面に活動を広げようとしています(お墓の会社の顧問は、ちょっと例外ですが)。
一方で仏教は人生における「苦」が中心テーマで、お坊さんは人を助けることに躊躇せず飛び込んでいく方がたくさんいます。この『おてらおやつクラブ』もきっと、見ないふりをしていた方が心安らかにいられるような場面に正面から向き合うことの繰り返しでしょう。
日本の社会問題解決に取り組むお坊さんたちの奮闘は、きっと多くの方に優しい気持ちや苦しい時に支えてくれる存在がいることを思い出させてくれます。ぜひ『おてらおやつクラブ』の物語にふれてみてはいかがでしょうか?