生きて死ぬ智慧(柳澤 桂子)
生きて死ぬ智慧
柳澤 桂子 著 Amazonで購入 |
43万部の大ベストセラー。『般若心経』を科学的視点を織り込みながら見つめ訳した本書は、このたかだか262文字のお経に、如何に世界を愛して作られたメッセージが含まれているかがよく分かります。
著者は生命学者であったが30代で病に倒れ、それ以後36年にも及ぶ闘病生活を送る歌人で、その不条理なまでの苦しみに抗い抜いた末の考察、洞察力には、言葉も出なくなりました。一つ一つの言葉の端切れはどこまでも美しくて、しかし全体を貫く意志には「生きる上での凄絶な覚悟」が感じ取れます。
難しい解説はありません。それどころか解説すらも(本編には)ありません。しかし深遠な般若心経の世界を一人の女性の瞳が射抜き、その描写がイメージを伴ってありありと浮かんできます。
私も般若心経の解説・訳文は様々なところで読みましたが、本書のように読みながらその中核を成す『空』という思想に心が届くことはありませんでした。さらには『空』に想いを馳せたとき、心を満たしてくれるとは考えもしませんでした。
生きて死ぬ智慧。まさに「生きて死ぬ智慧」です。般若心経には触れたこともない方も、普段から馴染みの方も、ぜひ一度手にとってご覧下さい。15分で読める本書があなたの『空』に対する世界観を、きっと新たなものにしてくれることでしょう。