個性的な宿坊が多い中で、自分にぴったりの場所を探すコツ
私はこれまで日本全国(一部、海外も含めて)100軒以上の宿坊に泊まってきました。そしてあちこちで宿坊の魅力を伝える中で、「一番良かった宿坊はどこですか?」とか「お勧めの宿坊を教えてください」など、多くの質問も受けています。
宿坊はお寺や神社の静謐な空間で、一夜を過ごせることが魅力です。しかしそれ以外にも文化財が見られたり、坐禅や写経が体験できたり、精進料理が頂けたりといった様々な楽しみがあります。
またお坊さんや神主さんのお話を聞き、一緒に泊まった人と語り合ったりなどもして、人生の中で特別な一日になったこともありました。
しかし宿坊は統一された形式がなく、できることはバラバラです。このためせっかく興味を持たれても、どこに泊まればよいかと迷ってしまう方もいるかもしれません。そこでここでは宿坊を選ぶポイントを紹介しながら、自分にぴったりの宿坊を探すコツをお伝えします。
個性的な宿坊が多い中で、自分にぴったりの場所を探すコツ
まずは基本的な条件から

最初は一般的な条件について。一泊二日で近場の宿坊に泊まるのか、お休みを数日取って遠方に出かけるのかで、旅行内容は変わります。また交通費や宿泊費を含めた予算によっても計画は左右されるでしょう。
特に宿坊の宿泊費がどの程度になるかは、気になる方も多いのではないでしょうか。宿泊プランや料理、体験内容、繁忙期かどうかで変わる部分もありますが、大まかな目安としては安いところで一泊一人1万円前後、少し高級なところで2~3万円くらいであることが多いです。またそれ以外に一棟貸しの宿坊の場合は一人だと数万円するけれど、グループで泊まれば安くなることもあります。
次に、宿坊で何がしたいかを考える

続いて宿坊でしたいことを明確にしてみましょう。宿坊はそれ自体が旅行目的になる、体験型の宿泊施設です。
例えば坐禅は主に禅宗のお寺でしか行うことができません。また滝行のような特別な修行は、行える宿坊も限られています。朝のお勤めも節のついた声明や、炎が燃え上がる護摩祈祷など、宗派によって形式が異なります。お経を唱えるお坊さんも一人のところから百人を超えるところまで、規模の大きさも様々です。
建築や庭園、仏像や絵画などの寺宝拝観も良いですし、縁結びや健康祈願などのご利益で選ぶのも良いでしょう。
お坊さんと話したいなら、小さなお寺の方が機会は多いです。ゆっくり時間を過ごしたければ都心から離れた宿坊もありますし、周辺観光も楽しみたければ観光地を基準に選ぶのもお勧めです。
特徴によって異なる、宿坊の3つのタイプ

宿坊は大きく分けると3つのタイプがあります。
一つは和歌山県の高野山や東京都の御岳山など、大きな寺社の周りに並んだ昔ながらの宿坊街です。こうした宿坊は江戸時代やそれ以前から続いており、戦国武将に縁があったり、文化財に指定される寺宝が伝わっていたりと、歴史や美術ファンにも人気があります。またそれぞれ地域に根付いた伝統料理が受け継がれていて、食事も充実しているところが多いです。
次に様々な宗派の本山や、都心部の大きなお寺に建てられた宿泊施設があります。ホテルのような内装でお寺らしくない部分もありますが、設備が整っているので快適に泊まれます。またお坊さんにガイドして頂けたり、普段は入れないお堂に上がれたりと、大きなお寺ならではの特典もあります。
さらに近年になって増えてきたのが、小さなお寺に作られた一日1組~数組限定の宿坊です。これらはお坊さんが自分で宿坊を開設したため、設備や仏教体験などにこだわりが強く、より個性的なことが特徴です。
料理から選ぶ

宿坊にとっては料理も楽しみの一つです。精進料理と聞くと、一汁一菜の質素な食事を思い浮かべる方もいるかもしれません。ですが宿坊で頂く料理は、見た目にも華やかなことが多いです。
これは宿坊の歴史とも関係があります。江戸時代の旅人は遠くまで徒歩でお参りしており、その目的も村を代表した豊作祈願などでした。このため宿坊での食事は、参拝を無事に成し遂げたお祝いの場でもあったようです。
また精進料理は作る側の心構えとして、料理させて頂くことへの感謝や向上心、食事する方を想う心などが説かれています。このような背景があり、宿坊では現在も工夫を凝らしたもてなしの料理が出されます。
精進料理はその土地の食材を使うことも重要視されており、豆腐や湯葉など地域ごとの名物もあります。こうした点から各地の精進料理を比べてみるのも、宿坊巡りの楽しみです。
ということで、、、
他にも写真映えするスポットがあったり、英語対応やバリアフリーなど、人によって重視するポイントもあるでしょう。また特別な行事がある日を選んだり、桜や紅葉の季節といった、タイミングで選ぶこともあると思います。
宿坊はそれぞれ個性的で統一された形がないため、その楽しみも無数にあります。まずは大まかにでもよいので、宿坊でこんなことをしてみたい、こんな時間を過ごしたいといったイメージを持ってみると、より充実した宿坊旅行を楽しむことができますよ。

