秋葉総本殿可睡齋(静岡県袋井市)の宿坊・座禅会・写経会・精進料理【くちコミ付き】
秋葉総本殿可睡齋
電話 :0538-42-2121(8時~17時) ウェブ :秋葉総本殿可睡齋 住所 :静岡県袋井市久能2915-1 アクセス:JR東海道本線「袋井駅」からバスで10分、「可睡」下車、徒歩5分 駐車場 :あり。大型バス20台駐車可能 |
【宿坊】 一泊二食9000円 (2名以上) 【月心会】 【精進料理】 |
宿坊は夕食二の膳付、祈判札、氏名読上げ、供物付です。精進料理は四季の食材を生かし、専任の和尚が心を込めて作った料理が頂けます。
毎週土曜日13~16時に土曜参禅会。毎月最終日曜日9時から座禅会、13時から写経会が行われています。精進料理はぼたんの花が咲く広大な日本庭園を見ながら、頂くことが出来ます。
600年を超える歴史を持つ古刹です。日本随一の火防の霊場として知られ、目の前で居眠りした和尚に徳川家康が「眠るべし」と言ったことから、お寺の名前「可睡(眠ってもいい)斎(寺)」が付いたと伝わっています。ぼたんの花が咲く時期(4月中旬~5月上旬)には、ぼたん祭りが開かれます。
何よりもトイレのインパクトが強烈な宿坊です。
えぇっ、トイレが? などと、あなどらないで下さい。トイレ(東司)は禅宗寺院における七堂伽藍の一つで、僧堂・浴司(お風呂)と共に、絶対に話をしてはならない三黙道場にも挙げられる大切な修行の場です。
可睡齋のトイレ(東司)は日本一のインパクト
この可睡齋の東司は昭和十二年に当時の建築技術の最先端を集められた水洗トイレで、中央には高村晴雲が作成した烏蒭沙摩明王像が立っています。
完成後はこのトイレを一目見ようと、多くの参拝者が訪れたとのこと。広々とした板張りの部屋には手洗い用の水盤とずらりと並んだトイレ。中央にはすっくと立つ烏蒭沙摩明王。その四本の腕には髑髏や宝棒を持ち、足元には象頭の歓喜天が踏みつけられています。
私はお寺好きの仲間と共に団体で宿泊したのですが、男女問わずにみんなで一目散にトイレに駆け込んで写真を激写。なんだ、この光景は? 「日本一の大東司」というキャッチフレーズは、伊達でもはったりでもありませんでした。
もちろん現役ですので写真タイムが終わった後は、各自銘々に用を足していたようです。ちなみに男女兼用ですが、女性専用のトイレは別にありますので、ちょっと抵抗があるな~という方はそちらも使用可能です。
スペシャリストのお坊さんが作った精進料理
トイレが終わった後は、精進料理を頂きました。こちらは2010年まで鶴見の総持寺で精進料理教室を開かれ、外務省御用達で精進料理も作られたことがあるお坊さんが、料理を担当されています。
出てきた料理はご飯、ぜんまい・お麩・わかめの味噌汁、菜の花の和え物、味噌で頂く胡麻豆腐、煮物(ふき・にんじん・さやえんどう・ごぼう・お麩・高野豆腐)、こんにゃく・山芋・お麩・とうふ・きんかん、トマトときゅうり、抹茶塩で頂く精進てんぷら(かぼちゃ・さつま芋・舞茸・たらの芽・あんず)、もちもちしたお麩ときのこ、しょうがあんかけ団子、香の物、デザート(いちご・芋ようかん)などです。
ボリュームはたっぷり。そしてお麩がたくさん使われているのが印象的でした。味付けは意外にしっかりしていて、それでも濃いということはなく、美味しかったです。一品一品に工夫が凝らされているからか、様々な味が楽しめてあっという間に食べ終わってしまいました。
座禅も体験してきました
食事後、座禅も体験させて頂きました。普段、お坊さん達が修行で使用している坐禅堂で、30分の坐禅です。お坊さんに従い、胸の前で左手を右手で握る叉手をしながら一列になって坐禅堂に入り、坐禅の仕方を教わります。
最初に壁に向かって合掌低頭し、次に壁を背にして向かい側に座っている人に合掌低頭します。これは隣の人同士の人と、向かい側の人に挨拶する意味があるとのことです。
そして縁に触らないようにして単に上がり、履いてきたスリッパをそろえます。坐蒲に坐り、身体を揺らして体勢を整え、三回鐘が鳴ると座禅開始です。背筋を伸ばすのが基本で、呼吸は深くゆっくり吐きます。また合掌すると警策で叩いて頂けます。右肩を一回ピシリと叩いて頂きましたが、初心者向けのためそれほど強くはありませんでした。
可睡齋の宿坊客室とお風呂
宿泊した部屋は24畳の大部屋に10畳半の部屋がついた団体用の部屋でした。浴衣は用意されていますが、タオルなどは持参です。お風呂は2~3人くらいが入れる湯船とシャワーが4つ。女性用はシャワー6つで男性用よりは広いそうです。お風呂の入り口には沐浴の偈が貼ってあり、「沐浴身体 当願衆生 身心無垢 内外高潔」と、書いてありました。
前に能登の總持寺祖院で修業体験をした時は、お風呂に入る前にも礼をしながらお経を唱えましたが、こちらでもきっと同じことが行われているのかもしれません。今回は修行ではないのでそこまで求められるわけではないのですが、ちょっぴり気持ち程度、心の中で唱えてからお風呂に入ってみました。
可睡齋の朝のお勤め
就寝は21時。お坊さんが拍子木を叩きながら、夜の合図をお知らせします。次の日の朝は5時45分に振鈴。同じくお坊さんが鈴を鳴らしながら、朝の合図を伝えます。こうした鳴り物を使って時間を知らせるところが、禅宗のお寺にいるんだな~という気分に浸れます。
朝のお勤め(朝課)は6時からです。最初は本堂で行われます。鐘を等間隔で鳴らしながら続け、般若心経や大悲心陀羅尼などを唱えます。経本を一人一冊貸して頂けたので、お経はお坊さんと一緒にお唱えしました。またこちらは徳川家にゆかりの深いお寺で、寺名の可睡齋も家康と対面している時にうとうととしてしまった住職に、家康が「和尚、眠るべし」と告げた事から付けられています。このためお勤めの中でも徳川家先祖代々の回向が祈願されていました。
本堂でのお勤めが終わると、次は御真殿でのお勤めが行われます。こちらは火防の神様である秋葉三尺坊大権現を祀る建物で、お勤めの形式も本堂で行われた禅宗の様式から、太鼓や鐘が激しく打ち鳴らされる密教のような祈祷に変わりました。経本をアコーディオンのようにパタパタと開いては閉じていく転読を行い、私たち参拝者は般若心経が唱えられる中、ご焼香をします。ご焼香はいつも回数がよく分からず、なんとなくやっていますが、こちらではお坊さんが1回頂戴をして、3回ご焼香していました(ので、真似すればたぶん間違いはないかなと)。
祈願の内容は家内安全・火災消除・緒難消滅・生業繁栄・心願成就が祈られ、火防の神様らしく日々の災いを除いて平穏に暮らせるようにとの祈りが多かったです。
またお勤めの後には法話もありましたが、こちらではこれまでの人生で会社を二つつぶして50歳を過ぎて仏門に入ったというお坊さんのお話でした。火防の神様は心の欲の火も消してくれると言うお話や、お坊さん生活は正座ばかりしているうちに足の痛みがなくなっていくというお話など、硬軟取り混ぜでとても楽しくためになりました。
朝食は絶品の小豆粥を頂きました
お勤めが終わると、次は朝食です。朝食は小豆粥、ごましお、こんぶとしいたけの佃煮、ほうれん草のおひたし、とうふの葛汁、うどのきんぴら、たくあん、梅干でした。最初にお坊さんに従って、五観の偈を唱えます。これは箸袋に書いてありますが、食事を頂く感謝と誓いを述べたお経です。こちらを唱えてから朝食を頂きました。朝のお粥は身体にとても優しく、前日の夕食にも負けないほど美味しかったです。
可睡齋の境内は見どころもたくさん!
そして食事を終えた後は、最後にお坊さんにお寺の中を案内して頂きました。可睡齋は牡丹でも有名ですが、宿坊の中には牡丹の絵が描かれた立派な襖絵や、さらには室内の牡丹園もあります。
赤や白の牡丹が綺麗に咲き誇り、ところどころに可愛らしい仏様が顔を出すなど、素敵な空間でした。また宝物館にも案内して頂きましたが、こちらは秋葉権現像や「火用心」「鎮火道場」の掛け軸など、火防信仰にまつわる文化財が多く展示されていました。
その他、境内にはたくさんの見どころがありましたが、とても楽しかったです。途中で修行を終えてまさに本日下山するというお坊さんが、仲間のお坊さん達に挨拶をしている場面に出会いました。修行を続けるお坊さん達のドラマに立ち会ってしまったようで、なんとも言えない清清しい気持ちになりました。
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