出羽三山神社(山形県鶴岡市)の修験道体験【くちコミ付き】
出羽三山神社
電話 :0235-62-2355 ウェブ :出羽三山神社 住所 :山形県鶴岡市羽黒町手向字手向7 アクセス:JR羽越線「鶴岡駅」から庄内交通バスで50分「羽黒山」下車 駐車場 :あり |
【峰入(7日間)】 50000円 【神子修行道場(4日間)】40000円 【錬成修行道場(3日間)】30000円 【回峰行(2日間)】 25000円 |
修験道の聖地・出羽三山では一般の方にも修験道の修行を受け入れられています。期間の長短や男性のみ・女性のみなど、様々なコースがありますが、それぞれ日程が決まっており、3~4ヶ月前に申し込み締切りがあるので、早めに申し込みを行う必要があります。
申し込み方法や必要な用具なども細かく定められていますので、ご興味のある方は公式サイトより、必要事項についてご確認下さい。
8月18日から20日にかけ、二泊三日で出羽三山神社の主催する山伏修行(練成修行道場)に行ってきました。
■ 初日 ■
朝9時、出羽三山神社の社務所で集合。ここで白衣、白袴、脚絆、ハチマキその他一式を受け取り、着替える。いきなり袴が穿けない、のアクシデント。紐がいくつもあって、なにがなんだかわけわかめ。足は脚絆を巻いてその上に白地下足袋を履く。これも慣れないとややこしい。こんな調子でこの先大丈夫か?
ところが、この合宿には班長と言うリーダーが8名程度の班におり、初参加者などをサポートしてくれる。ちなみに、7つくらいの班があってそれぞれに班長がいるのが、この錬成道場一行の構成だ。で、私はその班長さんに手伝ってもらい、やっとの思いで一通りの真っ白な装束を身につけた。周りを見るとこの装束に苦戦する人たちばかりだ。なんだ~みんな出来ないんじゃん、良かったぁ(って、ホッとしている場合か?!)。ちなみにこの時は初参加の人が多く、女性も3割ほど。年代別で言うと、30代もちらほら、30、40代が半分足らず、と言ったところか。
白足袋、脚絆、白ばかまにハチマキ、そして時代劇のような笠、といういでたち。神拝詞という、神道の文句(聖書やお経に当たるもの)、禊や鎮魂などの行事ための栞(マニュアル)も持ち、準備万端となったところで宮司のあいさつ。
さて、時間になり社務所の庭先に集合して出発。山懐にほらがいの音がブォ~と鳴り響く。以後、集合出発の合図はすべて法螺貝。練成修行道場の一行50名ほどは深い木立の中、表参道を羽黒山頂に向かう。祓川神橋を渡り、五重塔へ。周りは高~い杉の木に囲まれ、冷涼な空気が。一休みして出発。石の急な階段で早くも汗タラタラ、中にはきつい登りにヒーヒー言っている参加者も。途中のお茶屋さんで休憩。ここから見る庄内平野の美しいこと! 日本の景色、です。
その先、斎宮という宿坊で昼食。食事の前と後で、食べることに感謝をする和歌を読み上げ、いただきます! ごちそうさま! を唱和する。で、食事中は正座、私語も禁止なのです。
昼食の後は開祖である蜂子神社に詣でたあと、三神合祭殿を参拝。ここで昇殿し、正座して神拝詞を読みあげる。よく聞くのが、穢れ、と言う言葉だ。これ、この神拝詞のなかでも文句としてあって、詞は繰り返し唱和される。『諸々の罪穢れ祓い禊て清々し』。ひたすらケガレ、を祓う。唱和している間も、拝礼(平伏)している間も正座。すると、その背後からシャラシャラという音が。神主さんのお祓い? 終わったあと、立ち上がろうとしたら足のシビレが。うぅ、きつい。後の女子たちに笑われてしまった(汗)
そのあと、ハチマキに刻印を押してもらい、お神酒を頂いて記念撮影などして次の目的地、霊祭殿へ。森の中の古めかしい建物で、おごそかなオーラが漂う。夜は怖そう(~O~;)。ここで鎮魂なる儀式をやる。鎮魂、とは慰霊のような響きもあるけど、ここでの鎮魂は自らの魂を奮い起こすというもの。暗い神殿のなか、ここではひふみ祓詞、なるものを読み上げながら、左右の手を中に空間ができるように合わせて動かす。唱和と動作がここでは延々と続く。
長い鎮魂の儀式が終わったら、バスで月山八合目に。疲れてバスの中でウトウト。バスを降りたところは見晴らしの良い森林限界。低木と湿原の中をちょっと歩いて今日の宿泊地である山小屋、御田原参篭所に着く。さっそく参篭所の前にある月山中の宮に参拝。言うまでもなくニ礼ニ拍手一礼だが、この地での参拝では最後の礼がない場合もある。
さて、練成修行道場の一行の今夜の宿となる参篭所。女性の部屋は扉があるが、男性用のそれは天井裏の広間のようなところに雑魚寝状態。ここで一畳分の自分のスペースを確保して荷物を解く。ほっとするのもつかの間、夕食。夕食中も正座し、ハチマキは外さない。修行なのだから気を引き締めると言う意味で外してはいけないのだ。
夕食後に50名にも上る参加者による自己紹介。この行に参加したワケを中心にそれぞれが思うことを話した。日本を離れる前の思い出作りのためや、大学院で日本の文化・宗教を学んだことで参加した人もいれば、職場での苦しみ、大切な人の死をきっかけにした参加者も。誰もがひとりひとり、思いがあって参加しているのだ。
就寝前、外に出てみる。真っ暗な月山のシルエットの向こうに無数の星。ぐるりと見上げればほのかに白い天の川。今日一日、熱かった身も心も少しずつクールダウンして行く。落ち着けたところで小屋に戻り就寝。やっとハチマキを外しました。
■ 二日目 ■
翌早朝に起床、4時出発。慌ただしく白装束を整え、歯を磨き顔を洗い、朝食用のお弁当をリュックに入れ、ハチマキを締める。準備万端。外で班長を見つけ、整列。全員そろったところでいざ~! 真っ暗な中、ヘッドランプをつけ足元に気をつけながら、ひたすら歩く。後ろを振り返ると庄内平野の灯りがはるか彼方に。
歩き始めてすぐにおしゃべりする人も。朝から元気だなあ。ちなみに、こういった行(修行)ではお喋りはしてはいけなかったりする。また、歩く行の最中は後ろを振り返らないという禁忌もある。ひたすらストイックに、厳しく自分をコントロールすることも修行だと思う。でも、この行(修行)はそういったのとはまた違うものが得られそうな気がしてきた。
東の空が少しずつ明るくなり、気がつけば庄内平野から鳥海山もはっきり見渡せる。足もともすっかり見えるようになってきた。ほどなく夜明け、太陽が瞬く間にのぼる。
おなかがすいたところで、朝食。9合目の仏性池の小屋はまるで別天地。持ってきたお弁当をここでいただく。いつもどおり食事の前と後で和歌を読み上げる。この和歌はわりばしの箸袋に書いてあるので、それを読み上げるのです。ただし、箸が支給されるのは最初の食事である、一日目の昼食だけ。あとはこれをずっと使い続けなければならないのです。もちろん、箸袋も和歌を読むために持ち続けなければ。食べ終わった後はお茶で洗って箸袋へ。
ホラ貝が鳴り小屋を後にする。朝日が照らす月山、ところどころに万年雪を抱き、あざみやハクサンフウロの花もちらほら。昔の修行者が山の神様に追い返されたという行者返しを過ぎ、ひとしきり登って月山頂上。月山神社本宮だ。ここで参拝。人の形をした紙“ひとがた”を渡され、これを体中になぞって水に流す。ケガレ、を流す神道独特の儀式のひとつ。この日の午後に行う滝行も、こういったケガレ、を流す行(儀式)なのです。
ところで、この神社の屋根にある鏡にお賽銭を投げて当たるといいことがあるそうです。よ~し、やって見るぞ! えいっつ・・・ダメでした。
いつものごとく法螺貝がなって、頂上をあとに湯殿山神社に向かう。長いながい下りの始まりです。と、いつのまにやら霧が。山の天気は変わりやすいです。ごつごつした岩の道をガンガン下る。さすがに道場一行の列も乱れてきた。山歩きに慣れていない人もいて、たいへんそう。ところどころ休憩。この道場の一行、ほとんどお互いに知らない人同士なのだけども親切にも飴をくれる人もいて、なんだかわきあいあいとした雰囲気だ。
それにしても、ある班の班長さんであるXさん、歩いている時はずっとお喋り。もう還暦を過ぎているのだが登りでも下りでも元気に喋っている。歩行中はお喋り厳禁な行(修行)が普通だと言うのに。それにしても疲れないのかな?
さて、月山リフトに向かう道と分かれて、ちょっと寂しげな湯殿山の道へ。急に道幅も狭くなり草いきれもむんむん。汗もどんどんかくし、白装束も乱れがちなのできちっとせねば。そうこうしていると待望の水場! ここまで歩いてきて、山の裾からこんこんと水が湧いているのを見て嬉しくないはずはない。たっぷりと汲んでごくごく飲み干す。はぁ~生き返った☆
ほどなく、この歩行行(ほこうぎょう)の最大の難関、はしご下り。見た目垂直にも近い山肌に、梯子が掛けられている。落ちれば大けが間違いなし。脚に不安のある人や女性の間に男性が入りサポート。と言ってもできることは限られている。声をかけて心を落ち着かせることくらいか。はしごにはつま先でなく土踏まずを乗せるようにして、とアドバイスしたり。歩くのは自分自身でしかできないのだ。
ココを過ぎると、草いきれがますます濃~くなってきて、ようやく川のほとりに着いた~もうヘトヘト。でも、歩いてきたあ、って実感。しばし休憩し、バス停を過ぎ今日の宿である湯殿山参篭所にやっとの思いでたどり着く。ここでこの修行も一区切り。昨日の山小屋の参篭所と違って、立派な旅館、畳敷きの部屋が用意されていた。
待望の昼食、昨日からおにぎりと漬物とみそ汁の質素な食事。でも、どうしてこんなにおいしいのだろう? 昼食のあとは滝行だ。
さて、滝行に向かうのですが、そのためには前にわらじをはきます。これ、白足袋の上に藁で締めるのですが、やはりわらじなぞ穿いたことはありません。う~ん、どうやってはいたらいいものか??? この齢で初めてのことが多すぎ!
再び湯殿山神社に到着。ここで白装束を脱ぎ、禊の行衣に。と言っても、女性は建物の中で禊用の上下の衣に着替えるのだが、男性は観光客もいる野外でふんどし一丁の姿に。恥ずかしさに耐えるのも修行の一つだあ、なんて言われたりして(笑)東北弁で言われると逆らえないです(* ̄▽ ̄*)~
着替え終わると鳥船と言われるある種の体操をし、大きな声でまたもや詞を唱和。腹の底から声を出す。まさに雄たけびです。
これが終わると滝場に向けてGO! えっほ、えっほと声を出して走り、到着。思い切って飛び込むと、滝の淵は深くて肩までつかってしまう。水しぶき、水圧、体はどんどん冷たくなっていく・・・でも、きもちいい。何を考えていたかと言うと、なにもない。無心で、それでいて気持ちイイ。こんなことって、あるんだ。
湯殿山神社に戻り白装束を身につけると参篭。またも“ひとがた”を流し、裸足になって、ご神体である湯殿山の岩山に上る。お湯が岩肌を流れている上を歩くけど、アツイね~で、夕食の前に護摩祈祷。厳粛な雰囲気のなかで、護摩壇の火が燃え上がる。うう、また足がしびれた・・・
夕食の前、ある女性が男性の部屋の前でウロウロ。聞いてみると、班長のXさんはいますか? と。用件はその女性が月山からの下り、途中で歩くのが困難になったので荷物を班長のXさんに持ってもらい、そのお礼がしたくてXさんを探しに男性部屋に来たのだと言う。
正直な感想だけど、Xさんはこの修行の道中、おちゃらけている感じがあったと思う。班長とは言いながら、随分とゆるいんだなあ、と心の中で思ったりもした(ちなみに班長も一般の人です)。でも、こうしてしっかりと人をサポートしていたのだね。彼が班長として存在していることで、この行をやり遂げられた参加者もいることだろう。人を表面だけでは見てはいけないのだ。
そしてもうひとつ、助けられたことに感謝して、きちんと形に表すことをした女性。意思は伝えないといけないんですね。Xさんはその女性の感謝にも気さくに応えていました。
この日の夕食で、ようやく本格的な料理が出た。直会というものだ。私の理解するところでは、これは修行の終わりを意味する。お酒も少し出て、と~っても賑やかな雰囲気。なんだか修行に来たのかどうかわからないけど、こういうのも、ありなのかな。普段は一緒にはならない人たち・・・つらい思いをしている人、ヒマだから来ている人、仕事が絶好調な人、行き詰っている人、みんな、何かにきっかけで、何かの縁でここに来て一緒にいるのだ。
明日も朝は滝行がある。ハチマキを外して、布団に入りました。
■ 三日目 ■
いよいよ修行体験の最終日です~。この日も例によって法螺貝の合図で朝焼けの空の下を出発。今度の滝場は谷を歩いて行ったところ。山道に入り、岩を伝ったり水に入って沢を渡ったりしてひたすらのぼる。昨日とおなじ、男性が、女性や調子の出ない人をサポート。膝の調子の悪い人が、激しい水流に負けずに踏ん張る。それを見ると、支える手にも思わず力が入るというものだ。
さて、滝にたどり着いた。ここは滝が二つ、雄滝と雌滝とあり、水の勢いの強いほうと弱いほうがふたつある。ふつう、女性は水量の弱いほうに、男性が強いほうに入る。
ここで後ろに並んでいた同じ班の30代の女性達、彼女らは女性用の滝だけでなく、男性用の滝もチャレンジしていた。これ、昨晩の直会(なおらえ。打ち上げの宴会です)のとき、明日は両方の滝に入ろうね、なんてみんなで話していたのだね。昨日の最初の滝で躊躇していた彼女たちも、もうだいじょうぶ。楽しいとさえ言っていた。
もちろん、私も飛び込んだ。で、行くぞ! と、思ったら、水圧に押されていきなりへなっつ、滝壺で倒れてしまった(>_<。。) なめてはいけない。水は怖いと思う時もある。反対に心を安らかにしてくれたり、無にしたり、いろんなことをしてくれるんですね。水って、不思議。
すべての行が終わり、宿に戻る。朝食、そして解散。修了証を渡され、すべてが終わる。3日間お世話になった白装束から普段の服に。あっという間だった。修行がなんなのか、この修行がどのように役に立つのか、よくわからない。でも間違いなく修行なのだろう。
ひとりで何事かをやりぬく、これも修行。でも、誰かに助けてもらってやりぬくことも、修行。もちろん、誰かを助けることも。
座禅や滝行をやるくせに、私は神も仏も信じない。しかし、こうして心をひとつにしたり、無にするってことは無駄なことではないと思う。それぞれに目的もきっかけも違う人たちが、助け合って、意思を伝えあい、何事かをやったことは確かなのだから。
最後に、これらはすべて自身の偽らざる体験、気持ちですが、神主さん、神道関係の方ほか、文中、無礼と感じられたのであればお詫びいたします。また、神道関係の用語の使い方など正確に用いられていないところもあるかと思います。ご容赦ください。この行にあたって参加された皆さんと主催者の神社、先逹のかた、ありがとうございました。
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