みんなの万葉集(上野誠)
みんなの万葉集 響きあう「こころ」と「ことば」
上野誠 著 Amazonで購入 |
万葉集と聞くと、どんな歌を想像するでしょうか。難しそう。堅苦しい。わけが分からない。多分、そんな反応が一般的なのではないかと思います。
国語の教科書では「ますらおぶり」と表され、男性的で雄大な歌が多いと評される万葉集。しかしその実は繊細な恋歌も、苦しみや辛さを紡いだ弱音も多数収録されています。
千年以上も昔の人の言葉が、一直線に心に響いてくる。本書は出来る限り平易に、親しみやすく。学ぶよりも楽しもうという精神で書かれています。一つ一つの歌がどのような場面、どのような心情で歌われたのか、歌にはそれぞれルビが振られ、読むことで頭にも入るように工夫されています。
例えば、こんな歌があります。
西の市に
ただ一人出でて
目並べず
買ひてし絹の
商(あき)じこりかも
この歌の作者は平城京の西の市に一人で出かけて、絹を買ってきました。だけど、どうも粗悪な品だったようです。現代でも全く同じことが行われていそうな失敗が、歌として歌われています。
そして実はこの歌には裏の意味もあります。
絹は女性を指しており、一人でナンパをしてきたんだけど、声をかけた女性はどうも……。というような具合です。
等身大の万葉集。翻訳さえしてくれれば、万葉集はこんなにも楽しく、親しみやすいのです。千年以上昔の人も、今の自分と全く同じに悩み、喜び、考えている。そんな世界がこの本にはあります。
あなたも教科書ではわからなかった万葉集の世界に、ふれてみてはみませんか。