530年以上の歴史を持つ自得庵に建てられた宿坊です。食事は精進料理で、地元の野菜を中心に季節の素材を生かした料理が頂けます。事前予約をすれば写経・座禅の体験（両方とも1000円）も可能で、他に相談により車で近くの観光地の案内などもして頂けます。

　また「宿坊研究会のサイトをみました」と告げて予約された方には、特典も用意されています。伝統工芸品　名尾の手漉き和紙ハガキ2枚をいただくことができます。宿泊予約はウェブサイトからできますので、そちらをご参照ください。

　「遊禅館」は自得庵の本堂立て替えに伴い、禅寺を身近に感じて頂くために開館した宿坊です。

　臨済宗南禅寺派第二十一支所延命山「自得庵」は、当山開山月宮智星大和尚禅師が開いた寺で、 530年以上の歴史を持ちます。開山当時は、久保田藩に属し、龍造寺家の出城と見られていました。寺の周りには竹林を配し、有事の際には竹やりとして使用されたといわれており、墓地には龍造寺家側室の墓もまつられています。

　長い時代をへて、2008年に本堂建て替えて落慶法要を行いました。それに伴い、本堂の天井には壇徒である現代の名工・柿原弘資氏にダイナミックな龍を描いて頂きました。

　また「遊禅館」は、開催30年を迎える「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」の開催地・嘉瀬川河川敷にも近く、バルーンフェスタの時期には、多くの人でにぎわいます。さらに佐賀県の中央に位置し、四季折々の田園風景も楽しめる上に、有明海、有田焼、吉野ヶ里遺跡などの観光にも便がよく、高速道路などが整備されているため、他県へ行くにも便利です。

　素朴でアットホームな雰囲気の宿坊です。

　地図を見ると「ばるーんさが駅」が最寄ですが、こちらはバルーンフェスタ期間中（毎年10月下旬から11月上旬のうち1週間程度）のみ電車が止まる臨時駅です。

　このため私は隣の久保田駅から、歩いていきました。徒歩だと40分近くかかりますが、途中で川沿いや田んぼ道を歩いたりなど、気持ち良いコースです（お寺の方に話したら、「事前に連絡くれれば、迎えに行ったのに」と言われましたが）。

　客室は８畳＋６畳の二部屋が続きとなっており、床の間や板間部分があるなど、かなりの広さです。こちらに１人で宿泊させて頂きましたが、すごくのびのびと過ごすことができました。

　部屋には仏像や掛け軸、様々な調度品、佐賀県の観光パンフレットや、囲碁盤などがあります。アメニティ類も、タオル・バスタオル・歯ブラシ・浴衣がそろっていました。

　宿泊時には坐禅や写経が体験できます。坐禅は本堂でお坊さんに指導して頂きました。お堂の奥に単があり、座蒲団が重ねておかれています。こちらでじっと足を組み、呼吸を調えて坐ります。

　指導して下さったお坊さんにお話を伺うと、外国の方などは滞在中ずっと一人で坐られている熱心な方もいるとのことです。

　また写経も本堂で行います。こちらは般若心経をお手本に沿って筆ペンで書き写します。本堂にはご本尊として錫杖を持った地蔵菩薩が安置されており、天井には力強い龍が描かれています。その中で静かにお経を書き写す時間。これもまた、お寺ならではの体験です。

　他には梅湯（ばいとう）を頂いて、お坊さんと話す時間もありました。こちらはお白湯に梅干しを入れたものですが、禅寺では大切なおもてなしの飲み物です。梅の酸っぱさがじんわりと身体にしみわたり、疲れが取れていくような優しさがありました。

　また少し離れた場所ですが、アイルという温泉施設があり、こちらにも行ってきました。泉質はナトリウム炭酸水素塩泉で、美人の湯とも呼ばれています。地下1705mから湧き出た100％源泉かけ流し温泉で、肌もつるつるになったような気がします。

　朝になって境内を歩き、お寺の周りを見渡すと、一面が田んぼに囲まれた美しい風景です。自然豊かな環境で、心をリフレッシュさせられた宿坊でした。