宝林寺(群馬県千代田町)の宿坊【くちコミ付き】
宝林寺
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ウェブ :宝林寺 住所 :群馬県邑楽郡千代田町新福寺705 アクセス:・東武小泉線「東小泉駅」から車で10分 ・東武小泉線「西小泉駅」下車、バスターミナルよりあおぞら(大泉・千代田線)乗車「新福寺公民館西バス停」下車、徒歩約5分 駐車場 :あり 時間帯 :チェックイン15時~19時30分。チェックアウト11時。 収容 :定員6名 |
【一棟貸し】 素泊まり2名25000円~(清掃費別5000円) 手ぶらでBBQセット3800円 ※予約サイト、時期によって異なります ペット3500円/頭(2頭まで) |
徳治元年(1306)に草創された、釈迦如来座像をご本尊とする黄檗宗のお寺です。
境内には平屋の離れを一棟貸しにした『TEMPLE STAY ZENSŌ』があります。ペットと一緒に宿泊することも可能です。
坐禅(1000円/人)、写経(1000円/人)、読経(朝のお勤め)などの仏教体験を行うことができます。またBBQやピザ窯体験、スラックラインなども用意されています。
宝林寺は利根川をはさんで埼玉県と接する、千代田町にあるお寺です。付近は田園が広がるのどかな環境で、私が行った時にはあちこちで野焼きが行われていました。
なお、お寺は駅から離れた場所にありますが、境内の入り口に大きな駐車場があるので、自動車で行くと便利です。
その駐車場に車を停めて山門をくぐると、正面に本堂があります。その手前で右に曲がると、奥に宿坊が建っていました。こちらは昔からお寺にあった離れをリノベーションして作られた、一棟貸しの宿泊施設です。
■TEMPLE STAY ZENSŌ

玄関を開けると8畳と6畳の和室をつなげた客室があります。その他に広めに取られてリビングを兼ねた土間とキッチンに、トイレ、洗面所、シャワールームが設置されていました。
■客室

またテレビ、エアコン、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、食器類、調味料、金庫、Wi-Fiなど、短期から連泊まで、快適に過ごせる環境が整っています。アメニティはタオル、バスタオル、歯ブラシが用意されていました。なお、有料ですが、作務衣のレンタルも可能です。
■リビング(土間)

他にも面白かったのはスマホを入れるとデジタルデトックスができる電波遮断ボックスや、逆にコワーキングスペース用に集中して仕事ができる机、ペットをつないでおける骨の形をしたリードフックなどがありました。
いろいろなものを用意することで、多様な過ごし方に対応できるようになっているのも嬉しいですね。
本堂での写経体験
チェックインして施設全体の説明を受け、一息着いた後は本堂で写経を行わせて頂きました。書写するお経は般若心経で、お手本が薄く書かれた写経用紙に、筆ペンでなぞる形式です。
最初に副住職から説明がありましたが、正しい姿勢で座ることや深呼吸して心を落ち着かせること、そして周りの方が早く書き終わっても気にせず、自分のペースで書くことが大切と強調されていました。
■写経体験

合掌して筆を取り、一文字ずつお経の文字を書き入れていきます。ときおりお堂の外からカラスの声が聞こえたりしながらも、静かな時間で集中することができました。
そしてお経をすべて書いた後は、最後に願文と日付、名前を書き入れます。こちらはどのような願いを書いてもよいそうですが、最後に副住職が読経して仏様の前で願い事を読み上げてくださいます。
なのであまり他人に聞かれて恥ずかしいことは、書かない方が良いかもとのことです。以前に宿泊された子どもが「銭が欲しい」と書いていた時は、みんなで思わず笑ってしまったと仰られていました。
なお、書き上げた写経用紙はご本尊に奉納しても、自分で持ち帰ってもよいとのことです。
境内のライトアップ&バーベキュー
私が泊まった時は10月の終わりだったこともありますが、写経が終わった頃にはすっかり陽も沈んできていて、境内がライトアップされていました。
■鐘楼のライトアップ

こちらはもともと宿坊のために始めたものではなく、街頭がなかった町を照らすプロジェクトを行っている檀家さんに声をかけられ、お寺にもライトを入れるようになったそうです。
ただせっかく明るくするならと、門と本堂をしっかり照らしつつ参道には小さなライトを点在させたり、千代田町の文化財に指定されている梵鐘には時間と共に色が変化するイルミネーションを取り入れたりと、様々な工夫を施されたとのことでした。
そんな夜の景色を楽しみながら、宿坊の前でバーベキューを始めます。道具は全てお寺でレンタルしましたが、火起こしは着火剤を用いて炭に火をつけて行います。放っておくだけで勝手に火が付くファイヤースターターもあるので、難しいことはありませんでした。
■バーベキュー

食材も用意して頂きましたが、お肉とハンバーグは地元で育てられた上州牛です。噛むと肉汁がじゅわっと出てきて、お寺なのにちょっと背徳的です。他にも人参、ピーマン、茄子、椎茸、かぼちゃ、玉ねぎなどいろんな野菜があり、自分たちで持参した肉や野菜、お酒も追加して、炭火で楽しくバーベキューを味わいました。
こちらの宿坊は家族やグループで泊まる方も多く、やはりこのバーベキューは人気だそうです。さらに私たちは行いませんでしたがピザ窯もあり、自分たちで焼くことも可能です。宿坊でピザパーティーも、いつか挑戦してみたいですね~。
夜のコーヒーと仏教ボードゲーム
バーベキュー後は夜も更けて肌寒くなってきたので、宿坊に戻ってコーヒーを淹れました。
こちらは地元の焙煎所が厳選したコーヒー豆が用意されています。それぞれ仏教にちなんだ名前がついており、「喝」は苦味が強くて目が覚めるような味、「洗心」は酸味が強く、「三昧」は深みのある香りとそれぞれ個性がはっきりしていました。
■コーヒーセット

これも副住職のこだわりで、「不便まではいかないけれど、手間をかける行程を用意したい」とのことです。それによって目の前のことを大切にする禅の精神が、宿泊している間に感じ取って頂けるのではとのことです。
このため豆を挽くコーヒーミルや、お湯の量や抽出時間が測れるコーヒースケールも備わっており、形状の異なるドリッパーも選べるようになっています。さらにこちらは地下水も汲みだされており、コーヒーもこの水と合わせることで一番おいしくなるように調整されています。
バーベキューやピザもそうですが、コーヒーは淹れ方によって味が変化します。例えば高温で淹れると苦みが、低温で淹れると酸味が感じやすくなります。そこで置かれていたコーヒーのおいしい淹れ方の手引きも参照しながら、私たちもコーヒー豆の組み合わせを考えたり、機材をあれこれ使ってみたりと、いろいろ試して飲んでみました(なお、そこまでするのは難しいよという方のために、パックのコーヒーもあります)。
そしてそんな風に夜の一服を味わいながら、一緒に泊まった人たちで置いてあった仏教ボードゲームも遊んでみました。
■仏教ボードゲーム『煩悩』

『煩悩』はお釈迦様の生涯を辿った人生ゲームみたいな内容で、止まったマスによって煩悩が増えたり消えたり、他には弟子ができたりします。ゴールした時に煩悩がすべて消えていた人、たっぷりたまってしまったがいて楽しかったですよ。他にもお寺系の漫画や群馬のガイドブックなどが並んでいて、思い思いに時間を過ごすことができました。
そして夜も更け、シャワーを浴びて就寝です。シャワールームに置かれたシャンプーやトリートメントなどはお茶の実から搾った老いるが使われており、地元の千代田町で作られている商品です。こんなところからも、お寺と地域の関係が感じられますね。
ちなみにどうしても湯船に入りたい派の方は、車で15分ほどの距離に『安眠の湯』という日帰り温泉もありますよ。
朝のお勤めと坐禅体験
そんなわけでいろいろはしゃいで疲れたのかカフェインも全く眠りを妨げず、ぐっすり眠って翌朝は7時から本堂でのお勤めに参加しました。
■朝のお勤め

宝林寺は黄檗宗という、ちょっと珍しい宗派のお寺です。こちらはお経を中国語の発音で読むことが特徴で、例えば般若波羅蜜多心経は「ポーゼーポーローミートーシンキン」といった感じになります。またお経の節目を区切らずに流れるように読むことも特徴なため、他の宗派では聞き慣れている般若心経も、こちらではどこから始まったか全く分かりませんでした。
また本堂に並んだ仏様も、黄檗宗特有の仏像を見ることができます。向かって右側に安置された華光菩薩は道教の神様が禅宗に取り入れられ、お寺の建物を守ることから伽藍神とも呼ばれるそうです。他にも多数の仏様がいて、仏像好きな私としては副住職を質問攻めにして盛り上がってしまいました。
さらにお勤め後は、坐禅にチャレンジです。座布団を2枚重ねて1枚を半分に折り、その上に腰を下ろして坐ります。
■坐禅体験

坐禅は両足をももに乗せる結跏趺坐か、片足を乗せる半跏趺坐(足は左右どちらが上でも良い)で行いますが、それも難しい場合は足を組まなくても大丈夫とのことです。
また左手を下にして軽く手のひらを重ね、両親指をつけて輪を作る法界定印をおへその下あたりに置きます。背筋を伸ばして目線は斜め45度下辺りに落とし、鼻から息を吸ってゆっくり口から吐き出します。
木魚を3回鳴らして坐禅を開始し、1本目は約10分、そして少し休憩して2本目は約15分ほど坐りました。後半は警策で叩いて頂きましたが、これも黄檗式なのか、左右3回ずつ計6回叩かれ、背筋が伸びました。
坐禅中はお堂の外からいろんな種類の鳥の声が聞こえてきて、昨日の写経中はカラスだったななど、いろいろ頭に浮かんでしまうこともありましたが、坐ってゆっくり呼吸していると、身体中が清らかになっていくようでした。
副住職のお話
■海野峻宏副住職&ほーりー

その後、今回の宿泊は雑誌の取材を兼ねていたこともあり、海野峻宏副住職に、宿坊立ち上げから現在までの取り組みをお聞きしました(と言うか、編集者の方がインタビューしていたのを聞いていました)。
宝林寺に宿坊が誕生したのは2023年です。私自身、副住職とは宿坊を立ち上げる前からお会いしていたので、いよいよ開かれたのかと感慨深いものがありました。
そしてそれは地元の方にも、待望のものであったようです。千代田町はそれまで宿泊施設がなかったため、旅行に来られても長く滞在できない地域の課題がありました。
このため宝林寺に宿坊が誕生してから地元の商品とコラボする話が進んだり、広報などで協力してもらえたりと、たくさんの方に応援して頂けたとのことです。
またこちらでは、宿坊というよりも寺泊という言葉を使われています。これは宿坊というとどうしても昔からあるものを想像して少し身構えられてしまうため、あえて新しい言葉で呼んでいるそうです。
さらに玄関の入り口や客室に置かれた机など、ロゴマークの『○△□』が随所に見られます。これは「○=宇宙の真理」「△=悟り」「□=囚われの心」を表したもので、宿泊された方には一つでも角が取れて帰ってほしいという想いを込めているとお話しされていました。
はたして私のたくさんある角は一つでも取れてくれたのか。そうだったらいいなと思いながらも、朝からお勤めや坐禅をしたことで、晴れやかな気持ちでチェックアウトできました。
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