四万温泉にある約400年前に建てられたお堂です重要文化財にも指定されています。この薬師堂と境内にある摩耶不動には子授けと縁結びの伝説が残っています。

　昔、子宝に恵まれずにいた夫婦がいました。信心深かった夫婦は毎日神仏にお祈りしていると、ある日夫の夢に白髪の老人が現れて「四万温泉の薬師様にお祈りしなさい」と告げました。夫婦が言われたとおりにお参りすると翌年に女の子を授かり、喜んだ夫婦は薬師様にお願いして授かった子なので仏様にあやかり摩耶と名づけました。

　摩耶は大きくなるとその美しさから摩耶姫と呼ばれるようになり、近隣はおろか遠方からも縁談が殺到します。しかし摩耶姫の気に入った男は一人も現れませんでした。そんなときにある日、摩耶姫が近くのお不動様にお参りすると、不思議な老女が現れて日向見の奥の滝に行くようにと勧められました。そして摩耶姫が滝まで行くと、そこで鹿を追ってきた男と出会います。

　二人は不思議に思いながらお互いのことを話すと、これはお不動様の引き合わせだということが分かり、結ばれて幸せな家庭を築くようになりました。このことからこの滝は「摩耶の滝」と名付けられ、滝の側にたてられたお不動様も滝不動と呼ばれるようになりました。そして滝不動は現在「摩耶不動」と呼ばれ、日向見薬師堂の境内にまつられています。