菅原道真公を祀る神社です。菅原道真（天神様）は平安時代の学者でその優秀さから右大臣にまで昇りつめたものの、政敵の藤原時平に陥れられ、九州の大宰府へ左遷されて没した人物です。その後に天変地異が多発したことから鎮めるために神様として祀られるようになり、今では全国で学問の神様として信仰されています。

　荏柄天神社は日本三天神の一つに数えられてきた神社で、申し込めば受験当日に祈願もして頂けるなど、受験合格のお参りが盛んに行われています。また本殿は国の重要文化財にも指定され、境内にあるかっぱ筆塚には藤子・F・不二雄のドラえもんや、手塚治虫の鉄腕アトムがかっぱに扮した姿などが描かれて奉納されています。

　さすがに天神様だけあって、お守りも学業や受験合格に関するものが充実しています。『合格梅守』は梅の花が描かれた合格祈願のお守りです。

　なぜ、梅の絵なのか？　それは天神様（菅原道真）が詠んだ歌に関係があります。

　「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな」

　これは梅の花を愛した道真が九州へ向かって出発するときに、主がいなくなってもちゃんと咲いてくれよという想いを残した歌として知られています。

　このように梅は道真公のシンボルともなっている花なのです。

　絵馬にもちょっと面白いものがあります。それは『目的達成祈願絵馬』です。

　描かれているのは鷽（うそ）ですが、天神様が遭難した時の救いの鳥で、夢を現実に変える力があると云われています。

　この絵馬は他の絵馬とはちょっと変わっていて、お受けした後は一度家に持ち帰り、そこでお祀りします。そして願いが叶ったら鷽に目を入れて裏面にお礼を書き、神社に持参して報告祈願をします。

　鷽の眼光の鋭さが、目的を何が何でも達成してやるぞ！　と言った気合十分で、見るたびに初心に帰れる様な素敵な絵馬です。

　そして境内にあった『三択おみくじ』は、その名の通り三つの中から選ぶおみくじです。

　とは言ってもどれを選んで良いという訳ではなく、最初に横においてある筒からおみくじを引き、出てきた「梅」「天神様」「牛」に従って、さらにおみくじを引く二段階方式です。

　「梅」は先に述べましたが、「牛」も天神様のシンボル。大宰府に向かう時に牛に乗っていたり、死後に自分の遺骸を牛に乗せ、牛が向かった先で葬るようにと遺言するなど、天神様と牛は切っても切れない関係にあります。

　そんな風に天神様の人柄まで想像してしまえる、ちょっと素敵なおみくじでした。

　本殿の左側に『古神札納所』があり 、古いお札やお守りを返納することができます。